1.作物に必要な無機栄養素 | |||||||||
※リービッヒ(1803-1873 ドイツ): 植物が無機栄養で生育することを提起し、肥料学の基礎を作った | |||||||||
無機栄養素 | 17元素 | ![]() |
多量要素 9元素(C,O,H,N,P,K,Ca,Mg,S) | ||||||
微量要素 8元素(Mn,B,Fe,Cu,Zn,Mo,Cl,Ni) | |||||||||
元素名 | 化学記号 | ||||||||
炭素 | C | ![]() |
天然供給 | ![]() |
多量要素 | ||||
酸素 | O | ||||||||
水素 | H | ||||||||
チッソ | N | ![]() |
三要素 | ![]() |
普通肥料で成分保証 | ||||
リン | P | ||||||||
カリ | K | ||||||||
カルシウム | Ca | ||||||||
マグネシウム | Mg | ||||||||
イオウ | S | ||||||||
ケイソ | (Si) | ![]() |
有益元素 | ||||||
ナトリウム | (Na) | ||||||||
マンガン | Mn | ![]() |
微量要素 | ||||||
ホウソ | B | ||||||||
鉄 | Fe | ![]() |
効果発現促進材 | ||||||
銅 | Cu | ||||||||
亜鉛 | Zn | ||||||||
モリブデン | Mo | ||||||||
塩素 | Cl | ||||||||
ニッケル | Ni |
2.肥料の分類 | |||
(1)三要素系肥料 | |||
窒素質肥料: | 硫酸アンモニア((NH4)2SO4)・硝酸アンモニア(NH4NO3)・尿素(CO(NH2)2) | ||
燐酸質肥料: | 過燐酸石灰・重焼燐・(燐酸アンモニア) | ||
加里質肥料: | 塩化加里(KCL)・硫酸加里(K2SO4) |
(2)製造工程による分類 | ||
配合肥料 | 粒状肥料(BB肥料)--粒状の原料を配合(配合精度良好) | |
配合肥料-----------粒状・粉状の原料を混合 | ||
化成肥料 | 粒の中にNPKが含まれている肥料 | |
液状肥料 | NPKを水に溶かした肥料(超即効性) | |
ペレット肥料 | 有機配合をペレット状にした肥料(取り扱い便利) |
(3)生理的反応による肥料の分類 (作物により養分が吸収された後に残る副成分による分類) | |
酸性肥料 : | 硫酸アンモニア・塩化アンモニア・塩化加里・硫酸加里 など |
中性肥料 : | 硝酸アンモニア・過燐酸石灰・尿素 など |
アルカリ性肥料 : | 硝酸石灰・石灰窒素 など |
(4)肥料効果の遅速から見た分類 | |
即効性肥料 : | 肥効が速やかに現れるもの--BB699号・BB804号・BB500号 など |
緩効性肥料 : | 肥効が緩やかに現れるもの--BBs555号・BB555号 など |
遅効性肥料 : | 肥効がある時期が過ぎてから現れるもの 有機質肥料の一部・堆肥の一部・コーティング肥料(LP・LPSS) など |
3.三要素のはたらき | ||
チッソ(N) | 1. 作物にとって極めて大事な養分である。 | |
2. 根の生育や茎葉の生長を良くし、葉の緑色を良くする。 | ||
3. 養分の吸収及び同化作用を盛んにする。 | ||
4. 不足すると、葉が黄変し生育が貧弱で収量が少なくなる。 | ||
5. 葉ごえとも言われ、主に葉や茎をつくる。やりすぎると徒長する。 | ||
リンサン(P) | 1. 根の伸長を良くし、養分の吸収及び同化作用を盛んにする。 | |
2. 成熟を早め、品質を良くする。 | ||
3. 不足すると、分けつが少なくなり、甘味が低下し品質が落ちる。 | ||
4. 実ごえとも言われ花や果実をつくるのに必要。 | ||
カ リ(K) | 1. 炭水化物の合成・移動・蓄積に役立っている。 | |
2. 蒸散作用を調整し、体内の水分生理に関係している。 | ||
3. 根や茎を強くし、病害につよくなる。 | ||
4. 不足すると、葉は小さく、根の伸びが悪く根腐れが起きやすい。 | ||
5. 根や球根の肥大になくてはならない成分である。 |
4.肥料成分計算例 | |||
・オクラの単肥設計での肥料資材投入例 | |||
@基肥 N:P2O5:K2O=16:13:14(kg)/10aで計算する場合 | |||
単肥名 | 保証成分 | 計算例 | |
硫酸アンモニア | N ---- 21% | 16÷(21/100) = 76.2kg | |
重焼燐 | P2O5-- 35% | 13÷(35/100) = 37.1kg | |
塩化加里 | K2O--- 60% | 14÷(60/100) = 23.3kg | |
合計 | 136.6 kg | ||
A追肥 N:P2O5:K2O= 4: 2: 3(kg)/10a× 3回 | |||
硫酸アンモニア | N ---- 21% | 4÷(21/100) = 19.0kg | |
重焼燐 | P2O5-- 35% | 2÷(35/100) = 5.71kg | |
塩化加里 | K2O--- 60% | 3÷(60/100) = 5.0kg | |
計 | 29.7 kg | ||
合計 | 29.7kg×3回 = 89.1kg | ||
総合計 | 136.5kg+89.1kg=225.7kg |
4.肥料成分計算例 | |||
BB804号(20kg) N:P2O5:K2O=18:10:14(%) 1袋中の成分量 | |||
成分名 | 保証成分 | 1袋中の成分量 | |
チッソ | N --- 18% | 20×(18/100) = 3.6kg | |
リンサン | P2O5-- 10% | 20×(10/100) = 2.0kg | |
カリ | K2O--- 14% | 20×(14/100) = 2.8kg | |
合 計 | 8.4 kg |
欠乏・過剰
要素欠乏と過剰症対策 | ||
成分 | 欠乏対策 | 過剰対策 |
チ ッ ソ | ・0.2〜2.5%尿素液の葉面散布 | ・潅水などによる塩類濃度の低下 |
・流亡を防ぐマルチ | ||
リンサン | ・第一燐酸加里又は第一燐酸カルシウム0.3〜0.5%の葉面散布 | ・省資源的立場から有効利用を考慮 |
・次期作で燐酸施用を控える | ||
・土壌pHの中和 | ・燐酸過剰による他元素欠乏を考慮 | |
・条状又は塊として株際に施肥 | ||
・基肥として育苗期に十分施用 | ||
カ リ | ・野菜では塩類濃度の上昇しにくい硫酸カリの施用が良い(100kg/10a現物) | ・カリ無施用での野菜栽培 |
・カリ過剰による他元素の欠乏を考慮 | ||
・葉面散布は第一燐酸カリの0.3%液が一般的 | ・潅水による流亡 | |
・牧草による収奪 | ||
・ワラの利用(カリ含有量が高い) | ||
カルシウム | ・土壌中には多量存在しても起こる | ・露地ではアルカリ資材の施用を1〜2作やめる |
・葉面散布は、塩化カルシウム0.3〜0.5%液を一週間以内の間隔で数回散布(効果は薄い ) | ・ハウス栽培では、夏期にできるだけ長い間ビニールをはずし雨にあてる | |
・トマトのハウス栽培では、夜間の湿度を高く保つ | ・燐酸液、硫黄華、ピートモスの利用でpHを下げる。(自然に酸性化が進むので必要性は薄い) | |
・土壌湿度を地上部より上げる | ||
・アルカリ資材の施用 | ||
マグネシウム | ・土壌中の置換性マグネシウムが10mg以下の時は、炭酸苦土石灰又は硫酸マグネシウムを80〜100kg/10a施用 | ・施用する資材を検討し、マグネシウムの混入を避ける |
・降雨、潅水による除塩 | ||
・牧草による収奪 | ||
・土壌中に存在するのに起きる欠乏症には、1〜2%の硫酸マグネシウム液を、1週間おきに3〜5回葉面散布(10%液を1〜2回少量施用) | ||
鉄 | ・0.1〜0.2%の硫酸第一鉄又は塩化第二鉄の葉面散布を隔日ごとに5〜6回行なう | ・酸性土壌に起因する場合は、酸度の中和を行なう |
・カリの多量施肥によっても障害は軽減される | ||
・果樹では、1%液の高濃度液を1回散布 | ||
・バラでは、2〜3kg/10aのEDTA鉄の土壌潅注 | ||
・土壌pHに起因する場合は、pHを下げる(作物は土壌を替える) | ||
ホウ素 | ・0.5〜1kg/10aのホウ砂の施用が一般的。4〜6kgのFTE,60〜80kgのBMヨウリンも有効 | ・野菜栽培中では、消石灰、炭酸石灰等のアルカリ資材を株際に施用し、土と軽く混合(pH上昇) |
・異常を認めたら、0.1〜0.25%のホウ砂溶液の葉面散布(過剰障害発生に注意) | ||
・栽培後では、潅水後pHを高めておく | ||
・後作に、耐ホウ素性の強い野菜を栽培 | ||
マンガン | BMヨウリン、FTE等のマンガン資材の施用が有効10a当たりMnOとして2〜5kg施用 | ・土壌pHを上げる。野菜ならpH7.5程度まで上げても良い |
・硫酸マンガン20kg/10aも良いがく溶性の方が持続性がある | ・土壌を酸化的に保つ、排水を良くする。(高畦、暗渠) | |
・葉面散布では0.2〜0.5%の硫酸マンガン液が一般的 | ||
・不溶化して欠乏が起こる場合は、土壌pHを下げる。イオウ華20〜30kg/10aを施用しても良いが、軽微な場合はアルカリ資材の使用を中止し、硫安、硫加等の生理的酸性肥料中心の施肥体系を検討 | ||
亜鉛 | ・野菜への葉面散布は、硫酸亜鉛の0.1〜0.5%液が一般的(過剰障害防止で同量の生石灰を混合) | ・畑作物では、アルカリ資材を施用し、土壌pHを7まで上昇 |
・土壌へは、2kg/10aの硫酸亜鉛の施用。(条施が良好) | ||
・苗を1%の硫酸亜鉛の懸濁液に浸漬する方法も有効 | ||
銅 | ・硫酸銅を施用する | 亜鉛の施用(根の同位置からの吸収による抑制) |
→有機物の少ない土壌や酸性土壌は、0.5〜1kg/10a | ||
→有機物の多い土曜や中性土壌は、2〜4kg/10a | ||